SSブログ

学校間競争による過ち

 昨日のニュースで、昨年昨年4月に東京都大田区教育委員会が独自に実施した学力調査トップの成績をおさめた小学校が、保護者の了解を得ずに情緒障害などのある児童3人の答案を採点対象から除外していた、と発表したと報じられていた。
 区教委によると、学力調査は、小学2年~中学3年生を対象にしたもので、2004年度から実施され、各学校ごとの順位を公表しているものだという。この学校は、2005年度は44位だったが、2006年度はトップになったという。
 大田区と言えば、このブログでも以前書いたことがあるが(http://blog.so-net.ne.jp/e-nita/2006-11-06)、学力テストの成績などに応じて、区立の小中学校に配分する予算に差をつけるという、まさに安倍首相の言う「教育バウチャー制度」を率先して施行、安直なお先棒担ぎを演じている区なのだ。
 具体的には、各学校を4つのランクに分け、中学校の場合には約500万~約200万円までの間に振り分けて配当するという、アメとムチによる学校間競争を促す施策だ。

 この学校では、校長自らテストの現場に顔を出し、児童の間違った箇所を指で指し、誤りに気づかせるといった「指さし」をしたり、教員にもそうした行為を指示したとも言われている。また、校長は、本来すべてをそのまま回収しなければならないのに、2005年のテストの問題をほとんどメモし、翌年の児童に練習問題として繰り返しやらせていたとも伝えられている。
 これらは、いずれも自分の学校の平均点を高く見せるための「不正行為」であるが、そうした不正によって44位からトップに躍り出たとして、それが児童の成長にとってよいことではないということは、校長自身もわかっていたことではあろう。
 彼をそうした行為に走らせたものは、学校がよい評価を得、保護者によって自分の学校が選ばれたり、他の学校よりも多くの予算を獲得したりできるという、競争の負の側面からの甘い誘いだったのではないかと思われてならない。

 安倍首相の言うような安易な競争主義に立つ教育施策が、いずれこうした教育とは無縁の「点数至上主義」に立つ不正の流行を生み出すであろうことは目に見えていた。
 それはこのブログでも指摘したとおり、イギリスの失敗からも予測できたはずではなかったか。(http://blog.so-net.ne.jp/e-nita/2006-01-27
 学ぶことの喜びや面白さを伝えずに、友だちと競争ばかりさせるのは、子どもの成長をゆがめるばかりか、教師自身もゆがめてしまう。もっとも倫理が大切にされなければならない学校で倫理の崩壊が起こってしまったことに私たちはもっと危惧の念を抱かなければならない。単に知識の量を増やし、テストでよい点数を取ることが教育の目的ではないはずであるにもかかわらず、競争主義に立つ教育施策ではそのことがなおざりにされている。
 このような中で、足立区の休職者は年々増えており、特に学力向上の重点校になっている学校では休職者が続出しており、3年連続で教員の在職中の死亡者が5人となったとも報道されている。
 足立区の例は、突出しているかも知れないが、安倍流の「教育改革」が実現すると、日本中の学校がこの足立区の学校のようになってしまうことも大いに予想される。
 ほんとうの意味で「教育とは何か」を考え、論じていかなければ日本はますます劣化への道をたどることになるであろう。
 こんなことで日本の教育を堕落させてはいけないのだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

VOCALOID入手VOCALOIDを試用 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。