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現政権の正体

 先日来、各メディアが金融庁の審議会が出した「老後資金2,000万円不足」の報告書を
めぐる話題が報じられている。問題なのは、政権にとって不都合な真実をなかったことに
しようとするその姿勢だ。
 朝日新聞によると、安倍晋三首相はその報告書を見て『金融庁は大バカ者だな』と激怒
したとも伝えられている。そしてついには、麻生大臣のから『政府の政策スタンスとは違
うから受け取らない』と言いだし、与党幹部も『報告書はもう存在しない』とまでシラを
切る事態となった。

 そもそもこの審議会は、金融庁の諮問を受けたものである。にもかかわらず、政権の意
に沿わないものだからと言って“なかったものにしよう”というのであれば、審議会は事
実に反しても政府の意向を汲んだ結果を都合良く作成するための“御用機関”ということ
になってしまうであろう。
 安倍晋三首相は先月19日の党首討論で、国民民主党の玉木雄一郎代表からの質問を受
けて『(事実を検証するよりも)大切なことは、国民に誤解を与えない資料をつくること
ではないか』と答弁している。
 この審議会の出した報告書を“誤解を与えるもの”と断じているが、そんなことはある
まい。この政権の正体(本性)は、この答弁にこそ良く表れている、と私は見ている。

 都合の悪いことは『誤った情報』『誤解を生むもの』として国民に知らしめず、たとえ
国民が知ってしまったとしても『なかったもの』として臆面もなく隠蔽し、葬ってでも、
国民の歓心を買うようなものに作り替えて示しておけば我が身は安泰だ、する姿勢だ。
 つまりこの場合のように、『(誤解を与えない資料を)つくる』ことで、真実から目を
そらせることが政治の役割だ、としているようにしか見えないが、事実と異なるものをつ
くるということは、卑近な言い方であるが『でっちあげる』ということに他なるまい。
 何やら戦中の「大本営発表」を彷彿とさせる姿勢だ。

 そこで真実を報道しようとするメディアを「中立・公平」ではないメディアとして攻撃
したり、御用メディアを重用して言論を封じ込め統制しようと画策することに汲々とする
のだ。さらにその対象はメディアに限らず、異見を持つ官僚や野党に及び、奸計を用いて
でも相手を糾弾したり、印象操作をしたり、ねじ曲げた情報をメディアにリークするなど
して追い落としたり黙らせたりしてきたのだ。
 そのような政権であるから、国連の「言論と表現の自由」に関するデービッド・ケイ特
別報告者に『日本では政府が批判的なジャーナリストに圧力をかけるなど、報道の自由に
懸念が残る』と警告される事態を招くまでになっており、そのことは周知の事がらだ。
 多くの日本国民は気づいていることだが、その報告書でも『政府の記者会見で批判的な
記者が質問をした際、当局者が記者クラブを通すなどして公然と反論』したり『放送局に
電波停止を命じる根拠となる放送法四条を盾に事実上、放送局への規制』していると指摘
している。つまりは国際的に見ても、異常なほどに言論統制が浸透しているということだ。
 
 現実に目を向けず(現実に向き合おうとせず)、現実的な問題に立脚して課題を解消し
ようとすることのない“リアリティー”に背を向ける姿勢は、妙なナショナリズムと相ま
って、その傾向を強くしている。私はそのことに非常に危険な匂いを感じずにはおれない。
 かつての旧陸軍が、あれほど無謀な戦争に突き進み、多くの国民に犠牲を強いた上に、
壊滅的な敗北を招いてしまったのも、“国民の歓心を買う”ような希望的情報にすがり、
それ以外の真実は『それは誤解でしかない偽の情報だ』とばかりに無視したり排除したり
断定的に決めつけて隠蔽したりした結果なのだ

 これまでの現政権の振る舞いは、旧陸軍とよく似ていると言わざるを得ない。歴史を
顧みれば、非常に危険な兆候であるにもかかわらず、なお一強を保ち、一定の支持率を
保ち続けていることが不思議でならない。
 俳人の故金子兜太氏やノンフィクショアン作家の澤地久枝氏が『アベ政治を許さない』
としたのも、言論の自由を守ろう、ひいては現憲法を守ろうという現政権の危うい匂い
を感じたからに他ならない。
 現在うやむやになっている多くの政治的な問題は、この政権のそうした「本性」から
生まれたもの、もたらされたものであることを思うと、きちんとした良識に基づく抑制
的な政権に一日も早く戻さなければなるまいと強く思われてならないのだ。
 この政権の持つもう一つの本性が別に存在し、それがまた多くの政治問題の根っこに
あると見ているが、それはまた別の機会に譲りたい。
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