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台風一過で考えた

 先月台風15号が各地に、とりわけ千葉県に大きな被害をもたらし、いまだ
復旧の見通しも立たず過酷な生活を強いられている人々がいる中で、さらに強
い勢力を持ち、モンスター・タイフーンと名付けられた台風19号が通り過ぎ
て行った。
 強風や豪雨のため77人死亡 9人行方不明 372人けが(10/17現在)と犠牲
になられて方の数が報じられている。
 そして追い打ちをかけるような台風21号の襲来である。
 相次ぐ台風により、とりわけ目立ったのは、停電による二次被害による復旧
の遅れと多くの河川が氾濫し、各地で洪水が起き、避難指示や避難勧告がなさ
れたこと、逃げ遅れた多くの人が亡くなられたことだ。
 修復や復旧の困難さを思わせる模様がテレビなどのメディアで報じられてお
り、見る度に災害の大きさを思い知らされる。
 洪水や浸水の被害にあった地域の方々が、これからの生活をどう立て直して
いかれるのだろうか、と考えると胸がつぶれる思いがして言葉もない。聞けば
住み慣れた家を手放し、他に移住先を探すことをやむなく決断された方もおい
でになるという。その悲しみや無念さを思うと痛ましくてならない。
 
 近年、『経験したことのない』とか『10年に一度』あるいは『50年に一度』
といった形容がなされる異常気象が続発しているが、この要因が地球温暖化に
よるものであること、そしてそれが温室効果ガスによるものであることを明確
な証拠をもとに否定できる説明はできそうもないのではないかと思われる。
 台風が発生しても、日本近海の海面温度がかつてのように低ければ、その海
域に到達した台風は温帯低気圧に変わるはずなのだ。ところが赤道近くの海面
温度の上昇ばかりか、日本付近の海面温度まで高い状態が続いていることで、
台風がその勢力を弱めることなく強い勢力を維持したまま到達するようになっ
てしまったことが、このような『経験したことのない』暴風や豪雨をもたらし、
『想定外の被害』を被害をもたらしていることは疑いようがない。

 世界各地で氷河がその面積を減らし、極地で氷が大量に融け出している様子
を見ても、地球全体の気温上昇が続いていることは疑いようがない。
 石油や石炭の消費量の増加に伴い、大気に排出される二酸化炭素の量が増え、
二酸化炭素を吸収する森林の破壊も重なり、地球規模の気温の上昇(地球温暖
化)が起きているというのは周知の事実だ。
 そうした気温の上昇が「異常気象」と呼ばれる気候変動を生み、大雨や干ば
つなどさまざまな気候の異常につながっていることは、科学も証明している。
 そうした危機感から、グレタ・トゥーンベリさんが「私たちは絶滅を前にし
ている。なのに、あなたがたはお金と、永続的経済成長という『おとぎ話』を語
っている」と、国連気候行動サミットでの演説で批判したことは記憶に新しい。

 また、アントニオ・グテーレス国連事務総長も『世界の温室効果ガスの排出は
増えている。気温は上がっている。究極的には命にまで結果が差し迫っている。
そしてさらに悪くなる一方だ。科学は否定できない。多くの場所では気候危機を
知るのに図表は必要無い。窓の外を見るだけだ。』として、『科学は今のままで
行けば、今世紀末に3度気温が上がると言う。私はそのときいないが、私の孫が
いる。私は彼らの住む唯一無二の地球を壊す共犯者になることを拒否する。若者、
国連、ビジネスや金融、政府、市民社会のリーダーが動き始め、行動を起こして
いる。しかし、成功するためにはほかにも多くの人が温暖化対策を取る必要があ
る。先は長い。だが運動は始まった。』とパリ協定の締め切り2020年を前に動き
を強める必要性を説いている。

 COP3で決められた「京都議定書」により、先進国にはCO2などの温室効果ガ
ス排出を減らす義務が負わされたが、発展途上国の経済成長が急激に進み、エネ
ルギー使用と温室効果ガス排出が増大して、先進国を上回るようになった。
このため、196の国と地域が2015年の会議(COP21)で決定したのが「パリ協定」
だ。ところが地球温暖化の原因が人間の活動による二酸化炭素の排出増加にあると
いう考え方には異議を唱える人物もおり、そのわかりやすい例がトランプ大統領で
ある。アメリカファーストを唱える彼は、アメリカの経済活動を優先したい立場か
らパリ協定からの脱退を表明しているのだ。
 パリ協定は2020年の本格的なスタートに向けて、細かい仕組みやルールを作っ
ていくことを想定している。
にもかかわらず、そうした危機感を共有せず、身勝手な人間の営みを優先しよう
とする大国の論理はいかがなものかと思わざるを得ない。自分たちの代が良けれ
ばそれで良いわけではない。国連事務総長が言うように『唯一無二の地球』を子
や孫の代に大切に受け渡していく責務がある。そのために全世界の国々が、そし
てすべての市民が危機感を共有して何をすべきか、何ができるかを考え、実践し
ていく必要がある。
 
 日本では、近年だけでも東日本大震災とそれが引き起こした福島の原発事故、
熊本地震、西日本豪雨、常総市の鬼怒川堤防決壊等々、大規模災害が相次いで
起き、人間のこしらえたものなど自然の猛威の前ではひとたまりもないという
ことを痛感させらる事態が頻発している。
 つくづく思うのは、『人間の叡智』などという言い方は、単なる驕りでしか
あるまい、ということだ。もっと謙虚に事態を正確に把握し、高く広い視野か
ら何が求められているかを考え、将来を見据えて協働することのできる高々と
した志をもって困難な道程を切り拓いて行く知惠こそ、真の『人間の叡智』で
あろう。
 これ以上豊かな生命にあふれた、貴重でかけがえのない生きとし生けるもの
の「生きる場」としての地球を汚し続け、生きることの難しい場としてはなら
ないはずだ。

 「このままの状態でCO2が増えていくと、2100年には人間が生きられなく
なる」と予測する研究もあるという。最近、アメリカの研究グループが発汗に
よる体温調節機能からみて人体の限界気温を推定おり、摂氏43度になるとそろ
そろ限界だとしているようだ。
日本は特に湿度が高く、汗によって体温を下げる機能も働きにくい。最近では
夏の気温が38度に達する地域も複数あるので、、限界がもう目の前に来ている
のかも知れないと指摘する研究者もいる。
 国連は2015年、SDGs(持続可能な開発目標)を決めた。全世界を挙げて
いわば「人類最大の課題」の解決に向けて叡智を傾けなければならない時に来て
いるということなのだろう。
台風が過ぎ去った爪痕を見つめながら痛感させられた。

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