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民主国家の危機7

 このところ政治に関わる不祥事が相次ぎ、その一つ一つに驚いていては間
に合わない状況が続いて、何とも呆れるばかりの“劣化”状態である。
 安倍政権とそれを継承すると称した菅政権下で続発する様々な政治問題に
通底するのは、民主主義に対する理解の欠如に他ならない。
 そもそも議会制民主主義にあっては、選出された議員はもとより政権を担
うことになった与党議員には「説明責任」が課されているのだ。
 その件については、宇野重規著「民主主義とは何か」(講談社現代新書)
に詳述されている通り、古代ギリシャの都市国家で民主主義が産声をあげた
当時からの要件なのだ。
以下抜粋。
 『参加の一方で「責任」についても協調しておく必要があります。民主主
義において、参加の契機をみるだけでは不十分です。それと同じくらい、責
任の契機を重視する必要があります。それでは責任とは何でしょうか。一例
を挙げれば、任期を終了し、公職を全うしたとします。そのことは直ちに負
担の終了を意味しませんでした。というのも、任期中にしたことについて、
厳しい審査が待っていたからです。会計報告を行い、公金を横領せず正しく
用いたことを示さなければ、市民からの告発により、裁判にかけられること
を免れませんでした。会計業務以外の公務についても同じです。
 ~中略~
 さらには弾劾の仕組みがあります。近年でもアメリカのトランプ大統領の
弾劾裁判が話題を呼びましたが、この制度の起源は古代ギリシャに遡ります』

 上に述べられているように、政治家は自己の政治活動について、常に根拠
に基づくきちんとした説明ができるように求められ、市民は“正しく政治が
行われているかどうか”を監視し問うことで主体的に参加するという、いわ
ば緊張状態を保つことが求められているのだ。
 そこでは二階幹事長の『政府のすることにケチをつけるな』という発言や
菅首相の『指摘にはあたらない』『回答を差し控える』などといった発言は、
民主政治にとってあってはならないものなのだ。政治を委任され執行する側
は、常に根拠に基づく説明をしなければならないし、市民は納得が行くまで
『その説明は正しいか』『なぜそう言えるのか』を問う責任があるのだ。
問われることを避けて回答をはぐらかしたり、問いとは異なる回答をしたり、
問われることそのものを拒否したりするのは、民主政治そのものを否定する
ことにつながってしまうことを市民も(選出されて政治を担う)どの政治家
も十分に認識しなければならないのだ。

 このように書くと、民主主義とは何と面倒なものかと思える。
 多様な考えに基づく意見を集約し、合意を形成すべく努力し、具体的かつ
望ましい政策を立案して具現化を図ることが政権を担う者の「責任」であり、
有権者は我が事として「自分の意見」を持ち述べることが求められるし、述
べる権利を行使することができるのだ。
それは簡単なことではない。むしろ手間のかかるすこぶる「面倒な」ことで
あるに違いない。
 だが、その「面倒な」活動の展開を怠ってしまうと、民主主義はその脆さを
露呈してしまうことが、この十年近い安倍→菅と続く政権下で起きている政治
の劣化でよくわかったはずだ。

 ことに痛感させられるのは「責任」という言葉が著しく“軽く”なってしま
ったことである。政権を委任され、担う者には、その間の政策の結果について
正しく納得の行く説明ができなければ、弾劾されることを覚悟して政策の立案
・実施することが求められているのだ。その覚悟とは、文字通り「身命を賭し
て」ことにあたるという逃げ場のない瀬戸際に立つことも“止むなし”とする
潔い(いさぎよい)決意と態度を持つことだ。
 その覚悟もなしに、自分の思いにこだわり、身勝手で恣意的な政権運営を省
みることなく前のめりになっているのが、この十年近い政治の惨憺たる状況を
生んでいると思われてならない。

 主権者である国民が確かな目で「我が事」として社会の動きを見つめ、その
眼力を持って政治を監視することを怠ってしまうと、民主主義は徐々に綻びを
見せてしまうほど脆い(もろい)ものなのだ。そして脆いからこそ、大切に守
っていくことが必要だし肝要なのだ。少しでも気を緩め、油断してしまうと、
脆い民主主義は気づかないうちに変質してしまうものだということを、この間
の政治風景の様変わりがよく私たちに教えてくれている。

=この稿続く=
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