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斎藤投手 [教育全般]

 今年の全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)は、大会3連覇をめざす駒沢苫小牧と念願の初優勝をねらう早稲田実業の間で決勝戦が行われ、高校球史に残る延長引き分け後の再試合の結果、早稲田実業の見事な優勝で幕を閉じた。
どちらにも軍配を上げたいほどの息詰まる決勝戦、そして最後の最後まで一球一球に目を釘付けにさせた再試合。まさに熱闘甲子園で私たちを楽しませてくれた。すばらしい試合を展開してくれた両校に惜しみない拍手を送りたいところである。

 楽しませてくれたのはハラハラするような試合運びだけではなく、選手一人一人の真摯にゲームに打ち込む姿、力を尽くして勝利を勝ち取ろうとする姿、最後まであきらめずに粘ろうとするするひたむきな姿に感銘を受けたからに他ならないからであろう。
しかし、それは今年の大会に限ったことではない。毎年、敗れればそれで夏が終わるという「後がない」状況の中で選手たちは死力を尽くしてゲームを戦っできたはずである。だが、今年はそれを受けとめる私たちの心のありようが例年とは違っていた。

 口汚く相手を罵ったり、挑発したりするなど品性乏しい態度で臨むプロスポーツ選手が話題になりもてはやされる風潮の中で、私たちはスポーツに対してある種の幻滅を感じ始めていたのではないか。そこに早実の斎藤投手のような気品と賢さを備えた選手を見いだし、そのことにうれしさを感じたことがこれほどに感動を大きくしているのではないかと思われるのだ。
もちろん斎藤投手は見た目にも整った顔立ちで、ピンチの場面でもそのクールな表情を変えずに困難な状況を乗り越える頼もしさなど、世の女性を引きつける魅力にあふれた投手ではある。
しかし、こんなに熱狂的に受け容れられる理由はそれだけではあるまい。試合後のインタビューなどでしっかりした言葉遣いで受け答えをし、整った文脈で自分の思いや考えを言い表す姿に、日本の若者の中にもこのような賢さを備えた素敵な人間がいるという思わず小躍りしたくなるようなうれしさを感じるからこそ、出迎えのフィーバーが起こるような感動を生むのだろう。
どこかの新聞に書いてあった「正統派のヒーロー」という見出しが生まれるゆえんであろう。スポーツの選手も捨てたものではない、日本の若者もやるじゃないか、という「現今の風潮」から救われる思いがあるからこそ、連投に次ぐ連投を重ねて勝利を勝ち得た彼に感銘を受け、こぞって賞賛しているのではないだろうか。

 聞くところでは彼の家庭では「文武両道をめざす」ことを教育方針としていたという。
単に「勉学上の成績」と「スポーツにおける強さ」の両方を兼ね備えるというのではない。「両道」というからには、精神的・内面的にも成長し究めようというベクトルを包含した概念であることから、彼の家庭ではそうした方向性をもった家庭教育をし、彼自身もそれを実践してきたということなのであろう。
そうした心のありようが「仲間を信じて投げた」「応援してくれた家族やスタンドの仲間、後輩、全国のファンの後押しがあったから」という意味のコメントを吐露させるのだろうが、そうした真摯な姿が私たちの心をとらえたのだろう。そこにおのれ誇りをする傲慢な気配はなく、むしろ「すごいことをやってのけてしまったんだな」という自分たちの偉業とも言える勝利に対する驚きを感じているらしいことさえ窺わせ、微笑ましささえ感じられる。

 自らを奮い立たせようという気持ちからなのだろうが大口をたたいて自らをアピールし、その挙げ句持てる力を発揮できずに残念な結果に終わる人々を多く見かける昨今の風潮とは反対に、静かに自らと対手に向き合い見事な結果をおさめることができた彼の中に、本当はこうであるべきなのだ、という生き方の手本が具現化された姿を見いだしうれしさを感じているというのが実情なのではないだろうか。

 彼の使用していたハンカチと同じものを手に入れたいということか、どこで売っているのか、どこのメーカーがつくったものか、などの問い合わせがあるらしい。
同じものを持ったからといって、彼に近づけるわけではなく、根っこの気持ちの持ちようが変わらなければ人間が変わるわけではないのに、それを求めようとする人々もいるということはご愛敬だが、彼のような人間に注目が集まるということは「つくられたヒーロー」ではないものを求める現在の日本人の「切ない心のあらわれ」なのだろう。
いずれにしても彼の育った家庭環境のすばらしさとそれに応えた彼の立派さが浮き彫りになったすがすがしい話題である。


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