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あきれた話

 茨城県八千代町では、土曜日に塾の講師が学校を会場にして指導する「八千代サタデースクール」を5月から実施しているということが今日の読売新聞茨城版で報じられていた。もちろん県内では初めての例である。
 この試みを読売新聞は非常に好意的に扱っているが、大いに疑問を感じざるを得ない試みなのだ。
東京杉並区立和田中学校の茨城版に他ならないからだ。

 記事にはこう書かれている。
 まず、この土曜日の補修は中学生の親からの「学力向上を」という働きかけが契機となっているという。
 ところが記事の冒頭にはこう書かれているのだ。
 『「はい、顔を上げて。入試の出題パターンはこの二つだからね」。教室に塾講師の軽快なトークが響き渡る。』
 「軽快なトークの響き」については、受けとめる記者の主観的な感想なのでひとまず置くとして、『入試のパターンはこの二つだからね』というコメントからすれば、どうしてもこの補習は「受験技術の伝達」としか思えないのだ。
 しかも、この記事の他の場所には受講者の中学生の感想として、『やっている内容が入試問題なので、云々』と書かれていることから、やはり受験対策としての勉強が中心のようなのだ。
 学力と受験技術は似て非なるものであることは、学校も教育委員会も承知のはずだ。
 しかし、町教委も「民間の力を借りて学力の底上げを図るのも一つの手」とコメントしているようで、この教委の「学力観」の底の浅さを露呈してしまっている。
 しかも記事の最後には、教委のコメントとして『本来教員がやるべきことだが現実は難しい。子供のやる気にどう応えるかが最優先であって、メンツにこだわっている場合ではない』とも書かれている。
 学力観について正しく説明し、受験の技術(それは試験に合格してしまえば剥落してしまっても差し支えのない「ワザ」でしかない。知性の伸長につながるものではないはずだ)をもってしては、真の学力の陶冶には結びつく保障はないのだ、ということを説明し説得すべきなのではなかったか。
そうしなかったということは、この教委の「学力についての認識」がその程度のものでしかないということのあらわれであろう。どうも素人談義の域を超えない見識としか思えず、これが我が茨城の現状かと落胆せざるを得ない。

 学力についてきちんと見解を示し説明した上で、公立学校として望ましい学力の伸長を図る努力をすることが「メンツ」の問題なのかどうか、こうしたコメントしかできない教育行政のもとにある八千代町立諸学校とその職員はこのことをどうとらえているのか、大いに疑問を抱かざるを得ない。
 また、このことを『教育関係者らの注目が集まっている』と好意的に記事にまとめ報道している読売新聞社の「教育に対する認識の程度」と教育を扱う姿勢についてもどうしたことかと驚きをもって受け止めざるを得ない。
 こうした実践がマスコミによって流布・喧伝され、世に広まっていくようでは教育関係者として冷静ではいられないはずだが、多くの教育研究者はどう反応するであろうか。注目したいところである。

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