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「誇り」について その6 ~ついでながら1~

 「最後に」と項目を立てて書いておきながら、蛇足になるようだがここまで考えてきたことがらを国を挙げてスローガンにし、成功への途を辿っている「誇り高い国」があることを知った。
 チベット仏教の国「ブータン」である。ブータンは今、第4代国王ワンチュク王の唱える「国民総幸福論」のもと、物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさも同時に進歩させていくことを国是に新しい国づくりをしているところだが、その成功によって「奇跡の国」と注目を浴びているのだ。
 世界の多くの国がGDP(Gross Domestic Product=国内総生産)を高めることに関心を集中させている中で、GNH(Gross National Happiness=国民総幸福度)という独自の考えを打ち立て、開発はあくまでも「国民の幸福を増大させること」をねらいとしておこなわれるべきである、という政策をとっているのである。

 世界から注目を浴びているその独自の考えはどこから来たのだろうか。
1960年代~70年代初め、ブータンでは先進国の経験やモデルを研究したという。その結果、「経済的な発展は南北対立や貧困問題、環境破壊、文化の喪失につながり、必ずしも幸せにつながるとは限らない」という結論に達したのだという。そこでこれまでのブータン国王は、『ブータンは近代化しなければならない。しかし西洋化してはいけない』との基本的な考えで政治を司ってきており、現在の国王ワンチュク王もその考えを継承した上で「GNH」を唱えているのだという。

 君主制民主主義国家初代首相として、この3月にブータン初の民主選挙で選出されたジグメ・ティンレイ首相は言う。『これまでの国王も「西洋にもよいものがある。たとえば楽観主義、科学や技術を使うこと、そういうものは受け入れなければならない」と主張してきた。しかし、王たちは東洋の精神、東洋の目でモノゴトを見てきた。だから、自然を尊重し、人を尊重することを欠かしてはならない、との考えを基本に据えてきたのだ』
 先に、山折氏の文章を引用したが、ここでも「長い歴史の中で独自に培ってきた感性や理念に基づい」たモノの見方・考え方を重視する姿勢が強調されている。
 ついでながら、チベットの山々に囲まれたブータンは、道路を建設するにしてもトンネルを掘らないという。自然を尊重するブータンにあっては、神聖な場所である山を削りトンネルを造るなどとんでもないことだというのである。当然、道路は山を迂回するために長い距離を走ることになり、効率は決して良くはない。
 経済的合理性を原理とする西欧であれば、可能な限り短距離・短時間で目的地まで人や物を輸送できることをねらいとした道路建設であるという理由で、トンネルを掘ることを躊躇しはしない。むしろトンネルを掘って効率よく人や物を運べる方を選択するだろう。しかし、ブータンではその途を選びはしないというのだ。そうしたことからもブータンの国づくりに対する考えが窺えるではないか。

 それはさておき、ある市民はこれまでの国王が『人生のすべてはお金ではない、私たちは豊かにならなければならないが、金持ちになってはいけない。西洋の国々は金持ちかもしれないが、必ずしも豊かではない。』と指摘したことを踏まえ、ブータンでは、国民総幸福量の助けを得て、人々すべてが豊かになってほしいと願っていると言う。
それは、ワンチュク国王の「すべての国民が幸せを追求できる国づくりをするのは国家の、政府の義務である」との考えを背景にしていることだと言う。
その結果、驚くことにブータンでは『あなたは幸せですか?』という質問に対して、国民の90%を超える人が『幸せだ』と答えたそうだ。翻って日本人なら何%の人が『幸せ』と答えるだろうか。

【この稿続く】

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