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脳トレ効果について

 読売新聞によると、コンピューターを利用した脳トレーニング(脳トレ)は、健康な人の思考力や記憶などの認知機能を高める効果は期待できないことが、ロンドン大学などの1万人以上を対象にした実験で分かった、という。
 世界的なブームになっている脳トレについては、これまで大規模な検証はほとんどなかったが、多くのサンプルを対象にした実験・検証の結果、言われるような効果が期待できないことが明らかになったという。
 英科学誌ネイチャーに4月21日発表したところによると、18~60歳の健康な1万1430人を三つのグループに分け、英国で販売しているコンピューターゲームをもとにした脳トレを1日10分、週3日以上、6週間続けてもらい効果を調べた結果のようだ。

 その記事によると実験の内容は以下の通りである。
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最初のグループは積み木崩しなどを使った論理的思考力や問題解決能力を高めるゲーム、もう一つのグループはジグソーパズルなどを使った短期記憶や視空間認知力を高めるゲームをした。残り一つは、脳トレとは無関係のゲームを行った。その結果、脳トレを続けたグループでは、ゲームの成績は向上したが、論理的思考力や短期記憶を調べた認知テストの成績はほとんど向上せず、3グループ間で差がなかった。
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 どのような脳トレーニングをすれば、つまりどのような刺激を脳に施せば脳のどの部分が反応し、それによってどのような機能の亢進が期待できるのか、というしっかりした科学的な知見に支えられた脳トレーニングブームなのか、少しく疑問を感じていたが、どうやらその疑問はまったくの的はずれではなかったようである。
 そもそも人間の脳は、未だに解明されていない未知の部分が多いはずだ。こんな刺激をこの部分に与えれば、こうした脳の機能が高まるということが実験室の段階でわかったにしても、それが万人に対して有効であるときちんと言い切れるほど人間の脳の仕組みも働きも単純ではないはずだ。
 ある研究者も次のように指摘している。
 『脳は複雑な部分が多く正確に説明しないと誤解を招きやすい。今どれだけはっきりした知識があって、その中のどの知識を土台にし、どの角度からそういえるのかを明確に発信することが大事。自分が脳科学者だと自称したとき、あるいは博士号を持っていると言われたら、一般の人には否定することも難しい。心配なのは適当な話が独り歩きすると、本当に役立つ脳科学がまやかしのように誤解されてしまうことなのです』

 専門家と呼ばれる人の“一見科学的と思える説明”をもとにした脳科学ブーム、脳トレブームの中で安易に信じ込んでしまわない方が良いということだろう。そもそも科学は『それは本当のことか?』と疑ってかかることを基本的な姿勢として持っているはずだ。
 おもしろいゲームとして楽しんできただけの人々は別として、簡単に信じ込んでブームに乗ってしまった人にはお悔やみ申し上げるほかはない。もっともブームに乗って脳トレに励んだ人であっても、それをまったく真に受けて楽しんだ人は多くはないかも知れない。
 あいまいな知見をもとにブームをつくりだし、「思考力が高まる」「記憶力が伸びる」「想像力や創造力が高まる」と世の人々をブームに誘い込んだ脳科学者と呼ばれる人々も冗談半分、エンターテインメントと思って世の人々が楽しんでくれれば、といった程度に思っていたのかも知れない。そうとらえておいた方が、一般に流布されている脳科学の知識に“うさんくささ”を感じずに済むし、真摯に脳科学の研究に取り組んでいる研究者に失礼ではないような気がするのである。
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