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書籍のベストセラー・ランキングについて

 オリコンが今年の書籍販売のベストセラーランキングを発表したとのこと。
 それを見てみると、一位から十位までの中で、小説は「舟を編む(三浦しをん)」のみで、その他はすべてハウツー物ばかりだ。しかも半数をダイエット関連本が占めている。一位の『寝るだけ!骨盤ダイエット』、四位の『カーヴィーダンスで楽やせ!』、六位の『樫木式カーヴィーダンスで即やせる!』、十位の『樫木式カーヴィーダンスで部分やせ!』といった具合に、ダイエット関連の本がベストセラーに名を連ねている。
 しかも面白いことに、これらダイエット関連の書籍はすべて感嘆符(!)付きだ。このびっくりマークをつけて「痩せる」を強調したことも売れた要因の一つなのだろうか。
 それ以外も五位の『体脂肪計タニタの社員食堂』、九位の『大往生したけりゃ医療とかかわるな』も健康志向のあらわれか。
 
 それにしても文芸や評論などが売れずに、こうしたハウツー物が売れるという風潮は、得がたいものを手に入れる労力や努力を避け、手軽・安直に自らのものにしたいという願望のあらわれなのだろうか。
 誰かが成功したある方法が、万人に通用するとは思えないのだが、それにわっと飛びついて真似をしダイエットに成功した人はどれ位おいでなのだろう。
 自ら編み出す努力を放棄し、考えることを誰かに預けて他人の成功例を真似るというのは、お手軽ではあろうが面白みも妙味もないと思うのだが、たかがダイエットのことだ。そんなに大上段に振りかぶって「考え・工夫し・編み出す」ことを強調することもないのかも知れない。しかし、そうした本がベストセラーの半数を占め、多くが同種のハウツー物であるという状況は、どうなのであろう。こうした本は、読書の対象と言うべきものではなく、単に「刹那的な問題解決の方途」でしかない。そこでの問題が解消されれば、不要なものとして扱われるだけのものだからだ。

 そのことは措くとして、100万部を越えた書籍は皆無だという。誰も彼もが同じ物に飛びつき、それだけが世に流布されるというのも異常な事態で気味が悪いが、一時的・刹那的ではない、後の世に残るような内容の濃い確かな出版物が多くの人の手に渡り、読まれることが望ましいのではないだろうか。
 紙ベースの本が電子書籍とどう共存・共栄していくのか見通せない現状であるが、そうした「良書」をつくることも、その共存・共栄によりよく貢献する手立てとなるはずだ。 感嘆符(!)をつけて、大げさに内容を強調せずとも、内容に深みがあり、読んでみたいと思えるようなしっかりした本であれば、多少値がはっても人々は購入するはずだし、本棚に残され読み継がれていくはずだ。

 活字渇望症を自認する私としては、「読書」の対象となるような、考えさせられたり、感銘を受けたり、新しい視野を獲得できたり、人間の機微に触れたりするなど、ヒトやモノゴトの深部に迫れる書物こそ書かれるべきだと思うのだ。それは、難解であるかやさしくわかりやすいものであるかを問わない。幼児から大人を対象としたものまで、(たとえやさしい内容であっても)人間や事象の真実に「うそにならず」迫れるものであれば、手元に置いて長く愛読したいと思える書物となるはずだからだ。
 紙ベースの書籍が電子書籍に駆逐されると心配をする前に、良書を出版し世に出すことの方がもっと大切なはずだ、と思うのだ。もっとも紙ベースの書籍を出版し、流通させるには莫大な費用がかかること、電子書籍であればその費用を軽減できることなどを無視した(経済観念の薄い)私だけの偏見ではある。
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