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モーツァルトとドーパミン [日記]

 新聞の広告欄におもしろそうな本の広告を見つけた。
 タイトルは『モーツァルトが求め続けた「脳内物質」』とある。著者は、筑波大の須藤伝悦博士。出版は講談社+α新書。出版されたばかりの本なので、ネットで購入するのが近道かと思ったが、念のために近所の書店を覗いてみると、何と有るではないか。しかもたった一冊。しめた!とばかり購入してきて読んでみると、期待以上におもしろい。

 モーツァルトの音楽については、これまでもさまざまな効果が取り沙汰され、中には「頭がよくなる」「難病の治療に役立つ」「植物の成長に効果あり」など、疑わしいものもあった。この本もそうした類の怪しげな本かと思ったわけではないが、多少「鵜呑みにしない」ようにしようと多少かまえて読み進めたのだが、それは大変に失礼なことであることは、数ページも読まないうちに理解できた。そのような「キワモノ」的な本ではなく、きちんとした科学的な観察と検証を経て生み出された知見をもとに、モーツァルトの音楽と体内、とりわけ脳に働きかける分泌物の関係について論じた本なのである。しかも音楽や医学について予備知識を持たない一般の読者が読んでも理解できるよう、ごく平易な言葉でこれまでの研究成果が述べられているというしっかりとした内容の本なのである。

 なかでも興味が持てたのは、モーツァルト自身が幼児期から「てんかん」の発作を頻繁に起こしていたこと、注意欠陥多動性障害があったかも知れないこと、さらに長じては睡眠障害や統合失調症を患っていたことも疑われることが種々の記録から想像できるという指摘である。そしてまた、それらの障害を持っていたため、無意識にそれらの障害を抑えるための「ひたすら自分自身を癒す音楽」を求めて膨大な作品を創造したのではないかという指摘である。
 つまり、それらの障害や発作を抑えるカギとなるのはドーパミンであり、モーツァルトの曲は、脳内のドーパミンを増加させる要素を豊富に内包している、というのだ。
 そして、それは彼自身が無意識のうちに求めたことによるのだろう、と論じているのである。
 音楽によるドーパミンの合成亢進にかかわって重要に作用しているのは、高周波数領域の音であり、それが脳機能を活性化させ血圧を有意に降下させるということを実験・観察から突き止め、さらに同じ高周波数量域の音がストレスを誘発する要因となる可能性についても言及している。

 まさにモーツァルトは、体験的に音の性質を知り抜いた上で、さまざまな音を組み合わせ、ブレンドしつつ上手に高周波数領域の音を使いかつその刺激を隠し、ストレスを感じさせずに音楽を味えるよう、そして脳機能を活性化し心身を落ち着かせる音楽づくりに卓越した能力を持っていたのかも知れない。

 さまざまな障害を抱えたモーツァルトが、無意識のうちに音楽活動を通して得られる爽快感を体得し、ますます心地よい音を求めた結果、多くの作品が生み出され、今も人々を夢中にさせているのではないか、という指摘は目からうろこが落ちるような説得力を持つ。 映画『アマデウス』のモーツァルトも、注意欠陥多動性障害、音声チック、サヴァン症候群、統合失調症などさまざまな障害を持っていることを予想させるような人物として描かれていた。そうした種々の障害を彼が抱えていたお陰で、後世の我々が、人の手になったとは思えない神の恩賜のような多くの彼の作品を楽しむことができている、ということはしみじみとありがたみを感じざるを得ない。
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