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「酔い」の正体

 人間は、しらふでいるとき、脳幹中の網様体が視床を経由して大脳新皮質を刺激し、意識を明瞭に保ってくれる。
 一方、アルコールを摂取すると、脳全体が同じようにマヒするのではなく、大脳の外側から次第にマヒしていくと言われている。この大脳の一番外側にあって、アルコールによるマヒを最初に起こす部分が大脳新皮質。
 大脳新皮質は、人間がは虫類から進化してくる過程で身につけた新しい領域で、いわば「理性と知性の脳」であり、これがマヒすることで理性の鎖から解き放たれ、饒舌になっったり愉快な気分になったりする、というのが「酔い」の正体。
 そのように新皮質がマヒする一方で、新皮質よりも古い時代に獲得した旧皮質や古皮質の活動が活発になってしまう。旧皮質や古皮質は、生存、闘争、性などの本能を司っている「動物の脳」であり、潜在的な意識を司っている部分である。
 理性的な判断を司る大脳新皮質がマヒし、旧皮質や古皮質の活動が活発化するということは、コントロールのタガが外れて、動物的な本能がむき出しの状態になる。そこで、抑圧されていた感情が露わになり、愉快で陽気な気分になったり、ときにはいつもなら口にしないようなことまで言ってしまうことも起こる。

 その時点で飲酒をストップしていれば、ストレスが発散され、精神的なバランスを保つ上で結構なことなのだが、理性のタガが外れてしまった人の中には、適度なところで飲酒を止めることにも意識が働きにくくなり、さらに飲み続ける人も多い。
 すると、アルコールが旧皮質や古皮質にまで染みこんできて脳内のエタノールの濃度はますます高まり、「酔い」の状態がいっそう進むという。具体的には、大声で叫んだり、千鳥足となったり、呂律も回らなくなったりという泥酔状態となり、しまいには大脳の活動がすべて抑制されて意識を失い、眠りの状態に入ってしまうという。
 中には『どこをどう歩いて帰宅したかも覚えがない』『気づいたときには家のベッドの中だった』などと記憶を失ってしまうというのも、この泥酔状態のなせるワザ。

 昨日、自宅近くの公園で裸になって大声で叫んだり、駆けつけた警官に『裸で何が悪い』などという暴言を吐いてしまったSMAPの草彅君もそうした抑制からの解放状態にあったのだろう。
 普段の彼の言動からすると、彼は「よい青年」そのものだ。
 察するに、しらふの時には理性による抑制が働きすぎて、自己主張、自己表現がうまくできにくくなり、バランスを保ちにくくなっているのではないか。
 どこかで精神のバランスがうまくとれるように、酒の力に頼らず感じていることや思っていることを素直に吐き出したり誰かに聞いてもらえる機会をつくるなどのことが必要なのではないかと思った次第である。

 それにしても、鳩山総務相が「最低の人間」と憤慨して見せたのには、いささか驚いた。
 確かに「公然わいせつ」の現行犯であるとは言え、未明のしかも無人の公園の中でのできごとである。多数の衆人環視の中で行われたことでもないし、第三者を傷つけたり重大な損害を及ぼしたりしたわけではあるまい。罪は罪として、人間性そのものを全否定してしまうような今回の発言はいかがなものかと思わざるを得ない。
 彼はその発言を撤回して「最低の行為」と言い換えたようだが、発言を撤回しても「言ってしまったこと」が消えるわけではない。
 どうもこの人は、文部相の当時から軽率で、よくよく吟味した上での発言とは思えないような、あるいは考えの浅薄さを露呈するような発言が目立つ。
 それはさておき、下戸の私には想像もつかないのだが、他人に見られるかも知れない場所で裸になりたくなるほど昂揚した楽しい良い気分とは、どんなものなのだろうか。
 酔えない悲しさをかこつわけではないが、一生に一度くらいは、頭痛を起こしたり気分が悪くなったりせずに、そうした経験をしてみてもいいな、と羨む気持ちがないわけではない。

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